実は、今、審査員を引き受けたことをとても後悔しています。どの作文も、楽しかったり、じんと胸にせまってきたり、愉快だったり、すてきな魅力にみちあふれているのですもの。選ぶの、難しすぎます。どれも、みんな一等賞にしたい。それが、今のわたしの本心です。どの作文もお菓子のおいしさについてだけでなく、お菓子と人との関係、お菓子のおかげで人と人がどうつながっていけたのか、どんなに心が豊かになれたのかがきちんと書かれていました。見事です。上等のお菓子みたいに優しくて、心の疲れをとりさってくれる作文を読むことができて、幸せです。



迷い、悩み、さらに迷い悩みながらの、選考だった。
最優秀賞の『夜のお菓子』。
母親が家族が寝静まった夜、ひとりでお菓子を食べる。それは、いつも明るい母が決まって悩みごとがあるとき……。それを知った娘さんの視点からの、デリケートで、感受性豊かな味わい深い作品だ。
優秀賞受賞作の10作品はもとより、残念なことに選外となった作品の中にも、忘れがたい表現や場面が多々あり……。選考を終えたいまも、スウィートでありながらビターな感覚にとらわれている。