「ごめんね、クッキー」
徳島県 中学校一年
私の父は、朝早くから仕事に行って、私たちよりもおそく帰ってくる。朝早くとは、まだ日もでていない真っ暗なみんなが寝ている時間だ。父は真面目で、気持ちを言葉にするのが苦手だ。たまに説教をするときに言葉がストレートでイラっとしてしまう。
二学期のはじめ、私は友だちとのコミュニケーションに悩んでいた。私のクラスは、とても良いクラスで、友だちもいつも私を気にかけてくれる。でも、私は、気持ちを言葉にすることが苦手で、言葉を発する前に、「これで大丈夫かな。」、「変なことを言ってないかな。」と考えこんでしまう。家に帰って、落ちこんでいると、父が、帰ってきた。そして、「学校どうやったん。」ときいてきた。私は、「別にいつも通り。」と答えた。父は「わしに似て、話すん苦手やけん、大変やろ。」と言った。私は、私の悩みが父にみすかされたような気がした。私と父は、性格がとてもよく似ている。真面目で口下手。私がこんなに悩んでいるのは父と似ているせいではないかと、考えてしまい、父とけんかをしてしまった。
次の日も、その次の日も、夕方父とは顔をあわさず、父が帰る前にごはんを食べ、帰ってきたら、部屋にいた。
そんな私たちを見て母が「クッキー作らん。」ときいてきた。クッキーを作りながら、母から父が私のことを心配していることをきき、少し申し訳なくなった。でも、素直に謝れないかもしれない。クッキーの飾りつけのチョコペンを持って、考えた。
仕事から帰ってきた父にクッキーを渡した。父はそのクッキーを見て「やっぱりわしら似とんなあ。もったいなくて食べれんわ。」と笑っていた。クッキーに「ごめんなさい」とチョコペンで書いた。不器用な私と父の仲直り。